(以下、前号のつづき)
新たな携帯電話盗聴手法

一方、浦項工科大学校李(Lee Phil-joong)教授は、電波傍受するというやり方ではない別の盗聴方法が存在すると指摘している。暗号化された音声データを無線ネットワーク上に配信するための電話交換機(サーバー)またはその周辺の有線部分にて盗聴が可能であると李教授は言う。携帯電話をかける際には、まず音声がデジタル化されたのちそれが最寄りの基地局に送信され、それが移動体通信事業者の交換機を経由してから受信者の最寄りの基地局に受け渡される。基地局間の音声データ伝送は、固定電話と全く同じ有線通信で行われる。「移動体通信であったとしても仮にそれが有線部分で盗聴されるのなら、携帯電話もまた(盗聴に脆弱な=盗聴が簡単な)通常の固定電話と何ら異なるところはない」と李教授は言う。こうした考えに基づき2003年に李教授チームは、韓国第三位の携帯電話機メーカーであるパンテックグループと共同して、”盗聴されない電話機”を開発した。ある理由から販売的には失敗したこの携帯電話機は、CDMA方式で用いられる通常の変換プロセスに加えて独自の方式で音声信号を暗号化するものである。


それでも情報通信大学校の李教授は次のように言う。韓国内のネットワークシステムにおいては有線部分の盗聴はあり得ないのであるから、非合法的なCDMAの(携帯電話の)監視などということは馬鹿げている、と。「仮に裁判所が警察による有線部分での盗聴を許可したとしても、警察は盗聴対象者がやりとりするパケットデータを特定することは出来ないだろう」、さらに「そうするためには移動体通信事業者がネットワーク(システム)を大幅に変更する必要があるだろうが、通信事業者にとっては一文の得にもならないことに費用をかける理由はどこにも無い」とも李教授は言う。李教授は、アメリカ合衆国では法執行官が有線通信部分で特定のデータを分類収集できるように(通信事業者の)ネットワークシステムを変更する為の費用を連邦政府が支出している、と付言した。


なお、KTF(注:韓国第2位の携帯電話通信事業者)の見解は李教授と一致している。KTFの関係者は「私たちは誰が通信中であるかを把握することは可能だが、特定の会話(の中身を)を抽出することは出来ない」としている。


(おわり)

出典:Kim Tae-gyu,"Is wiretapping possible for cell phones?",July 29, 2005(http://www.asiamedia.ucla.edu/article.asp?parentid=27458)