一昨年10月より警察庁が一部の犯罪事案について電話による匿名通報を受け付ける「匿名通報ダイヤル」の運用を始め、さらに平成21年7月1日より、電話だけでなくインターネットでも受付を開始しました。
参考)匿名通報ダイヤルに関する政府広報(平成19年11月)

通報受付対象となる犯罪種は「人身取引事犯」(*1)および「少年の福祉を害する犯罪」(*2)となっています。

(※1)少年の福祉を害する犯罪の例:

  • 児童買春・児童ポルノ禁止法違反
  • 労働基準法違反(危険業務・深夜業への従事等)
  • 覚醒剤取締法違反
  • 強制わいせつ罪等

(※2)人身取引事犯の例:

  • 人身売買罪(暴力・脅迫・欺罔・金銭の授受等を通じて女性を獲得・収受)
  • 出入国管理および難民認定法違反(外国女性の不法就労等)
  • 売春防止法違反(売春の斡旋・場所の提供等)

一昔前なら家庭内暴力といえば若者の反抗を指していることがほとんどでしたが、最近ではドメスティックバイオレンス(直訳すればこれも家庭内暴力、ですね)やネグレクト(育児放棄)などと言われ、その多くは女性や子供たちに対する暴力や遺棄・虐待です。家庭内における女性や子供たちに対する虐待は、それが家庭内部の問題であるところから傍目にはうかがい知れないケースが多く、また、周囲の人々にとっては他人の家庭内問題にくちばしを挟むことに躊躇を覚える人も多いことでしょう。そしてそれが結果として最悪の結果を招くこともあります。

戦後の日本では、警察は民事事件に介入しない・介入するべきではない(民事不介入原則)とされてきました。つまり原則として家庭内のトラブルや私人間の争いには関与しない・させない、ということです。こと家庭内の問題に関しては、介入に抑制的なのは警察に限ったことではなく、裁判所なども通常の「裁判所」とは別に「家庭裁判所」というものを設け(所在地はたいてい同じ場所ですが組織上は別物になります)、あるいは訴訟よりも調停を優先する調停前置主義をとるなどして私的な自治を重視しています。今後も従来同様、(少なくとも建前上は)民事不介入原則が守られてゆくはずです。

しかし最近では新聞紙面上にドメスティックバイオレンスや児童虐待のニュースが掲載されない日はないくらい頻発しています。特に児童虐待などの問題は、対等な私人間の争いと異なり、児童(子供)が自力で解決することはきわめて難しいのが実情です。本来ならば、彼らを保護することを本務の一つとする児童相談所等の役割も重要なのでしょうが、強制力を欠いた児童相談所・民事不介入原則との兼ね合いが悩ましい警察のどちらも、児童虐待に十分な対応策をとれない現状があります。


なお通報の受付先は、一般競争入札を経て警察庁より委託を受けたNPO法人日本ガーディアンエンジェルス、受付サイトは「匿名通報ダイヤル」(フリーダイヤル:0120-924-839)となっています。